こんにちは、おしま狩人です。
生まれて間もない頃はバンビとして可愛がられ、成体になっても凛としたシカの姿は”美しい野生の生き物”そのものです。
しかし最近はシカの個体数が北海道から南の鹿児島まで激増し、農林水産や自然環境に多くの被害を与えているのが現状です。
そんな”シカ”の特徴6つを、なるべく簡潔にまとめました。
日本に生きる”シカ”とは
日本には外来生物が野生化したものを含めると、8種類のシカが生息しています。
- エゾシカ(北海道)
- ホンシュウジカ(本州)
- ツシマジカ(対馬)
- キュウシュウジカ(四国、九州)
- マゲシカ(鹿児島県馬毛島)
- ヤクシカ(鹿児島県屋久島)
- ケラマジカ(沖縄県ケラマ諸島、人為移入)
- キョン(千葉県と伊豆大島、飼育状態から野生化)
多くの種がさまざまな地域に生息していますが、キョン以外はひとくくりにすると”ニホンジカ”です。
大きな個体のエゾシカも、小さな個体のケラマジカやヤクシカも、”ニホンジカ”の亜種。
ニホンジカは海外にも生息している
シカ科シカ属で、学名はCervus nipponといい、日本にしか生息していない生き物かと思いきや…
東南アジアからベトナム、中国の日本海沿岸にかけて広く分布しています。
海外でも多くの被害や影響を及ぼしているそうですが、、
この記事ではそんな”ニホンジカ”について解説していきますね(`・ω・´)
国内のどこに生息しているのか
参考:林野庁
日本国内の積雪が激しい地域以外にほとんど生息しています。
実はニホンシカ、雪が苦手な生き物なんです。
30㎝以上の積雪があるとエサを探せず、餓死してしまいます。
日本では森や林に住んでいることが多く、最近は美味しい餌をもとめて人が住む里山地域に生息範囲を広げています。
ニホンジカの生息域は1978年から2014年までの36年間で、約2.5倍に増えているといわれています(`・ω・´)
里ジカと山ジカ
生息域を広げているニホンジカですが、おもに里山の近くで生活するものを里ジカ、山中に生息しているものを山ジカといいます。
山ジカはなにも被害を及ぼさないんじゃ…
と思いたくなるところですが、
- 里ジカ…おもに農作物被害
- 山ジカ…おもに森林被害
個体が増えすぎるとこのような被害が出てきます。
森林被害では樹木が立枯れをしたり、地表の植物がなくなってしまうことから保水力が失われ、さまざまな災害の元凶となってしまいます。
どれくらい増えているのか
参考:環境省
野生生物の個体数を把握することは簡単ではありませんが、環境省がニホンジカの捕獲数などから統計的に生息数を推定しています。
国内のニホンジカは2012年度に249万頭生息していると推定され、現状のままだと2023年には423万頭に増えると予測されています。
シカの繁殖能力って?
メジカは毎年1頭しか生みませんが、妊娠率の高さや妊娠可能になるまでの時期が早いことから高い繁殖能力を持っています。
シカは季節繁殖性の生き物で、主に9月~11月に交尾を行い、妊娠期間は7カ月半から8カ月、多くのバンビは5月上旬に生まれてきます。
シカの繁殖能力を簡単にまとめると
- 繁殖時期…9月~11月
- 妊娠期間…7か月半~8か月
- 妊娠率…非常に高い
- 出産頭数…主に1頭
- 発情期…メジカは生後16か月から
- 妊娠可能年齢…10~13歳まで
メジカは生後16か月で最初の発情期を迎えるので、1歳から妊娠することが可能です。
栄養状態が良ければ、10~13歳まで妊娠できますが、野に生きるニホンジカの平均寿命は4年。
野生のメジカは1頭あたり3~4頭を生むことが平均値のようです。
発情期の行動については後から詳しく解説していきますね(`・ω・´)
なにを食べるのか
二ホンジカは草食性で、青草やイネ科の雑草類、広葉樹の枝葉から木の実、キノコやイモ類まで1000種以上のエサを食べます。
とくに好物なのがケヤキの枝葉とされ、個体が年間に採食する量の約70%以上を占める(地域による)といわれています。
北上するに従って、ササの葉をより食べる傾向にあるようです。
どれくらい食べるのか
個体の大きさにもよりますが、ニホンジカは1日平均3~5キロ食べます。
木の葉3キロを食べたとすると、ケヤキの葉(1枚約0.2g)…その数15,000枚に。
15,000枚…それでもよくわかんねぇ(`・ω・´)
季節によって食欲が変わる
シカの食欲が旺盛な時期は、たくさんの葉が生い茂る春から夏にかけて。
秋から冬になると、食欲が減り、体重も減少します。
夏ジカがおいしいといわれているのは、たくさん食べ物を食べて脂のりが良くなっており、いい肉質になっているからなんですね。
シカの胃袋は4つ
ニホンジカの胃袋は4つあります。
牛や馬などと同じ”反芻胃”という胃をもち、食い溜めすることが可能です。
反芻とは、食べた食べ物を吐き戻して噛み直す行動のことをいいますが、食い溜めできるってすごいですよね。
シカの身体的特徴と能力
個体の大きなエゾジカから小さなヤクシカがいますが、4種の身体の大きさ(成獣)を表にしてまとめました。
エゾジカ | 本州ジカ | 九州ジカ | ヤクシカ | |
体長 | 140-180cm | 110-150cm | 100-140cm | 90-120cm |
体重 | 70-140kg | 50-80kg | 40-60kg | 30-50kg |
南下するにしたがって個体の大きさが小さくなることをベルクマンの法則といいます。
暖かい環境で体温を管理するためには、なるべく身体の小さい方が効率がいい。
逆に寒冷地では、身体の芯まで簡単に冷やさないために大型の身体になっています。
身体能力
ニホンジカは2mの柵を飛び越える高い跳躍力を持ち、優れた嗅覚と聴力を備えています。
簡単にまとめると
- 人間の数千倍といわれる嗅覚
- 1キロ先の音を聞き分ける聴力
- 2m以上の柵を越える跳躍力(エゾジカなどの大型種)
- 特に赤色を見分ける視覚
- 最高60km/hの速度で走る
- 泳ぎがとても上手
これらの能力を持っています。
敵だと認識するまでは
なにか近くにいるな…?
と、逃げることはあまりないですが、いったん敵だと認識するとその逃走スピードは凄まじいです。
以前ぼくが150mほど離れたシカと対峙し、ジーっとこっちをみていたのですが、銃を取り出した瞬間に一気に駆けて逃げていきました。
シカに関する視力の情報が少ないですが、相当な視力を持っているのではと思っています(`・ω・´)
シカの行動
ニホンジカの行動パターンは
- 行動時間
- シカの性格
- 群れをつくる習性
- 発情期
から形成されます。
それぞれについて解説していきますね。
行動時間帯
シカは薄明薄暮性(はくめいはくぼせい)です。
本来ならば早朝と夕暮れに採食行動をしますが、人間に出くわすリスクを減らすために夜間に活動することが多いです。
性格は基本的に臆病
シカは基本的に臆病な生き物です。
特にオジカの警戒心は強く、常に周囲を注意しています。
しかし環境に慣れると一転、昼でも堂々と人前に現れるなど大胆な行動もとります。
危険が差し迫ると逃走しますが、逃げられない状況や発情期のオスは勇猛に戦います。
ニホンジカの性格は以下の4つに大きく分けられます。
- 臆病
- 慣れると大胆
- ときに勇猛
- 好奇心が旺盛
性行動によって変化するオジカの性格
オジカの角は春に脱落し、この頃のオジカは穏やかで性欲がなく、よく群れて暮らします。
9月末の繁殖を迎えるころに合わせて立派な角やたてがみが生え揃い、すすんで単独行動をとります。
9月~11月の発情期を迎えたオジカは猛々しく、安易に近づくと危険です。
異変に気づくと
ニホンジカは敵や異変に気づくと、すぐには逃げずに目や鼻、耳で対象を観察します。
さらに近づくと、シカは数歩走って立ち止まり、敵が明らかに追ってくることを確認すると逃げ出します。
敵が危険を及ぼさないと判断すれば、逃げずにウロウロしたりします。
すぐに逃げださないのが好奇心のあらわれで、
いったい何だろう?
と観察しながらこちらを振り向くのがなんとも愛らしいです。
群れをつくる習性
群れの構成はさまざまですが、
- 発情期…ハーレム
- 発情期以外…単独や少数、血縁関係、母子行動
以上の2パターンにわけることができます。
平原などの開けた土地では大規模な群れをつくり、森林などの山あいでは単独~少数で活動する傾向があります。
発情期のハーレム
9~11月の繁殖期は、優秀なオジカを中心にハーレム(10~15頭)を形成します。
見張りをする3頭のオジカが群れの中にいることが多く、先頭・中腹・下方位置から群れの安全を見守ります。
成熟したオジカは単独行動
成熟したオジカは単独行動をとることが多く、発情期になるとメスと共にハーレムを形成します。
母子・血縁行動
シカの子どもは生まれてから約4か月間、授乳を必要とします。
そのため5月上旬に生まれるバンビは、9月上旬に離乳するまで母親と一緒に過ごします。
オスは単独行動のため巣立ちますが、生まれた子がメスであった場合、そのまま血縁関係を結んだ行動をすることが多いのが特徴。
それにしても発情期を迎える段階で離乳って、シカはうまく進化してきたんですね。
発情期
ところどころでニホンジカの発情期について触れてきましたが、その行動特性について触れていきます。
オジカの性行動
オジカは発情期(生後18か月後)になるまでに、鹿角とたてがみを立派に成長させます。
発情期になると
- 毎日1~2回の泥浴び
- 角磨き
- 眼下線や脂線からフェロモン液を出す
- ブオゥ!ヒャララ!ピィー!と鳴く
- 陰茎が突出する
- オジカ同士で角の突き合いが起きる
- ハーレムの形成
- 採食しなくなる
これらの行動を起こします。
オス同士の角突き合い
ハーレム形成時のオス同士の角の突き合いは勇ましく、角を突き合わせ、立ち上がって前足で蹴り、抑え込みます。
下に抑え込まれた方が逃避し、次のテリトリーに向かいます。
メジカの性行動
メジカもオジカと同様に9~11月に発情期を迎えます。
- 尾をふりながら走る
- 外陰部が赤く腫れ、透明な粘液をたまに出す
- ピィーと小鳥のように鳴く
- 落ち着かない採食行動
基本的に受け身な行動をとりますが、自らオスに近づくこともあります。
発情時間は短い
メジカの発情時間は短く、特定のオスと18~36時間以内に交尾が行わなければ次のオスのところにいってしまいます。
シカの高い妊娠率
特定の相手とは毎日2~3回行為をするため、高い妊娠率を維持します。
交尾時間は短め
シカの交尾時間は長くても30秒、平均10秒程度で終わります。
まとめ
日本中に住むニホンジカの食性や行動、繁殖能力などを6つにまとめました。
自然の生き物なのでまだわかっていないことも多いですが、身近に住むシカの生態について
へぇ、そうなんだー。
となにかを得ていただけたら幸いです。
さらにシカの生態を学びたいのであれば、こちらの本がおススメですよ。
おしま狩人でした。