【猟師になると変わる思考】現役ハンターがアニミズムについて考察し、まとめてみた 

狩猟

狩猟に興味はあるけど、実際にやってみたいとは思わない。

という人が多いです。

 

狩猟を簡潔に説明すると、

獲物をみつけ、殺し、解体して食べるという行為。

 

生き物の命、とくに大きな哺乳類(シカやイノシシ)の命を奪うことに抵抗がある人が多いです。

 

ただし、ハンターだからといって命を奪うことに慣れているとは限りません。

 

もちろん個人差はありますが、

命を奪う瞬間だけは苦手…

という猟師もいます。

 

 

この記事では狩猟という行為をすることで生まれるアニミズムについて、

アニミズムの解説とハンターが思うアニミズム思想について紹介していきます。

アニミズムとはなにか?

ちょっと聞きなれない横文字ですが、

アニミズムとは動物・植物、そして無機物にも人と同じ魂が存在しているという思想のことです。

 

思想自体は人類が狩猟採集生活をはじめた頃からありますが、アニミズムという概念を定着させたのはイギリスの人類学者、E・B・タイラー。

 

19世紀後半、『原始文化』という本を出版し、アニミズムの概念を広げました。

衰退するアニミズム

良くも悪くも、人間はより良い生活を求めるために自然をコントロールしようとし、結果としてアニミズム的な思想を衰退させました。

 

自然とは隔離されているような人間社会の構造も、大きな影響を与えています。

キリスト教とアニミズム

近代宗教と原始的宗教は以下のようにわけられ、

 

  • 近代宗教…キリスト教、仏教、イスラム教
  • 原始的宗教…アニミズム、シャーマニズム、自然崇拝、多神教

アニミズムなどの原始的宗教が衰退した大きな理由として、キリスト教の拡大があげられます。

 

キリスト教は一神教(唯一の神)として存在しているのに対し、

原始的なアニミズム思想は山や川、樹木や動物に至るすべてのものに神が宿っているとされました。

 

端的にまとめるとキリスト教主導として文明が進化するにあたり、原始的なアニミズム思想は邪魔なものとして取り扱われました。

植物や動物すべてに神が宿っているとするアニミズム思想は、支配的な農業牧畜社会の妨げになったからです。

 

日本における近代宗教・仏教について

近代宗教の中には仏教がありますが、日本に根付いている仏教はそれ以前にある原始的なアニミズム思想を引継ぎ、キリスト教とはまた違った影響を及ぼしています。

 

神の存在を信じるときもあるし、信じないときもある日本人

世界的には無宗教とよばれる日本人ですが、受験や出産、事故などが起きると日本人は”神頼み”をします。

また正月になると初詣に出かけ、神様に挨拶をします。

かといって常に神の存在を信じているかというと、そうでもない。

 

見方によってはバランスのいい思想をもった民族なのかもしれません。

 

ただ、資本主義的(=自然支配的)な傾向はどうしてもありますけどね。

 

自然支配については疑問を持ちつつも、

まぁしかたないよね…

という思考を持つ方が大半なのではないでしょうか。

 

自然と対峙するハンター

猟のスタイルにもよりますが、ぼくは個人で動く単独猟が好きです。

 

あまり人とつるまないという理由も大きいですが(笑)、

ひとりで自然と対峙している感覚が心地いいからです。

 

アニミズム的な思想を感じるようになったのは

  • 狩猟鳥獣と対峙したとき
  • 狩猟鳥獣を食べて、その背景を想像したとき
  • 感情をもつ動物への関心

の3つです。

魂を感じる狩猟現場

魂については以下のように定義しておきます。

 

霊魂(れいこん、英:SoulもしくはSpirit)は、肉体とは別に精神的実体として存在すると考えられるもの。

出典:Wikipedia

 

思考や感情ではなく、霊魂は生き物を生き物たらしめている要素といえばいいんですかね。

 

狩猟をすると、この魂に正面から向き合うこととなります。

 

簡潔にいえば、

なにかしらの意思をもってわなに捕らわれているシカを絶命させることで、

シカが肉のかたまりになり、魂がフッと消滅してしまう。

 

そんな感覚です。

 

生きているシカにはたしかに生き物らしさがあったのに、死んでしまったらただの肉。

 

あの生き物らしさを持った”魂”はどこにいくのだろうと不思議に思います。

 

狩猟鳥獣を食べたとき

畜産の豚や牛とは違い(違うというとまた語弊がありますが…)、

自然の中で生きている生き物は、自然のモノを食べています。

 

自分が仕留めた狩猟鳥獣を食べるとき、

かれらが自然の中で食べたものがその血肉となり、それを口にする

というなんともリアルで、かつワイルドな瞬間を体感するわけですが、

このときに命のつながりや自然の偉大さ、それらを食べることができる喜びというか、感謝の概念が生まれます。

 

感情をもった動物に関心が湧く

狩猟をしていると、狩猟鳥獣の感情を感じるシーンがあると前述しました。

 

ぼくはこの体験から

感情をもった動物が対象の獲物を捕食するとき、どのような思考をするのだろう?

と関心を持っています。

 

ハンターとして狩猟鳥獣をしとめたときに感じる喜びとある種の虚しさは、

感情をもった動物も同じような思考を持つのだろうか。

という答えの見つからない疑問です。

 

このような考え方も、アニミズム思想の一環なのかなーと思っています。

まとめ

以上、アニミズムの解説とぼくが思うハンターのアニミズム思想について紹介しました。

 

 

  • 猟師になりたい
  • 自然の中で過ごす時間が好き

このような想いや感覚があるのであれば、猟師の言葉として参考にしていただけると幸いです。

 

最近ではゴールデンカムイというマンガ・アニメが人気ですが、

その中に登場するアイヌ民族の文化にも、アニミズム思想は深く関わっていますよ。

おしま狩人でした。

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